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かくも世に不思議なもの−同じ行為が30万円にも3千万円にもなる仲介手数料
JUGEMテーマ:マンション

★ 不動産販売において、私がどうにも腑に落ちないものの1つが仲介手数料です。仲介手数料の上限額については国土交通省の告示で決められており、上限いっぱいに設定されているのが普通です。

 その額は、皆さま御承知の通り、400万円超の物件であれば
3%+6万円に消費税をかけたものとなります。1,000万円の物件であれば約39万円、5,000万円の物件であれば約168万円、1億円の物件であれば約330万円となります。

 それでは
1億円の物件の仲介が1,000万円の物件の10倍手間がかかるかと言えば、そんなことはありません。例えば、レインズから適当な物件をHPに上げてコーヒーを飲んでいる間に突然現金買いの客から買付申込書がFAXで送られてきたとすれば、その後売主側の業者と連絡を取りながらひな型に沿って契約書と重要事項説明書を作成し、物件の引渡しを見届ければ仲介手数料が転がり込んでくる、という仕組みです。

 不動産のやり取りは首都圏のマンションや戸建てだと通常は数千万円はしますので、
これだけの行為で数百万円が仲介業者の懐に入ります。商業ビル1棟もので10億円の大型物件だと、仲介の行為はほとんど同じでも仲介手数料は約3,246万円で、下手するとこの仲介手数料だけで新築マンションが買えてしまいます。

 「手数料」とは、文字通り「手数(てかず)」に対する料金です。物件価格が高額でも低額でも仲介行為の手数(てかず)はほぼ同じなのですが、なぜこの額が定額ではなく定率で、しかも上限がないのでしょうか。中古マンションも高騰しつつある現在、一般人にとってはこの高額な仲介手数料がとてもイタく感じられてしまいます。

 今まで見聞きした中で一番すごかったのは、次のような事例です。まず、関連グループ(仮に「根こそぎホールディングス」と名付けます。)土地仕入れ会社A(根こそぎ開発)が土地を安く仕入れ、それに
利益を乗っけて関連グループ仲介会社B(根こそぎ不動産販売)に売却の媒介を依頼、根こそぎホールディングスではこれを条件付売り地として売り出し、Bが仲介する形にします。Bは買い手に対して当然仲介手数料を請求し、融資斡旋手数料まで取った上で、根こそぎホールディングスでは関連グループ設計会社C(根こそぎ設計)に設計をさせます。Cは当然設計料を買い手に請求し、根こそぎホールディングスでは関連グループ会社D(根こそぎ建設)に建築を請け負わせます。そして、Dは当然建築費用を買い手に請求することとなります。

 つまり、
買い手は、A、B、C、Dすべての工程で利益や手数料がたっぷり乗った額を支払うことになります。A、B、C、Dは本来、「根こそぎ社」という1つの会社だったのですが、分社化することで「仲介」や「設計委託」など、各社が利潤を吸い上げやすくなります。そして、その利潤の原資は全て、か弱い一個人にすぎない買い手が負担することになるのです(ただ、1社売主であったとしても、結局販売価格に各費用が全部盛られているので、むしろ「見える」化されるだけましかもしれません)。

 「お客様への仲介手数料は無料です」メールでこのような回答をもらった時、私は心が震えました。最近、ある気になる物件が出てきて、私はふと、「仲介手数料無料か半額!」と宣伝している業者にメールで問い合わせてみたのです。その物件は売主が業者であったために仲介業者が1社しか介在せず、結果無料化が可能になったのでした。

 仲介をお願いする会社について、
その手数(てかず)は一緒なのに、ふと気が向いてE社ではなく、F社にメールしただけで、私の負担は数百万円違ってくるのです。これは、「そんなばかな!」と怒るべきなのか、「いや、そんなもんそんなもん」と得心すべきなのか、私には判断ができません。

 1つ言えるのは、
仲介手数料は「そのようなもの」として受け入れられ、それがビルトインされる形で仲介会社の経営が回されているという事実です。その良しあしや妥当性はともかく、この「3%+6万円」が会社の利潤として当てにされて予算化され、それを基に各会社の経営が回り、社員の給料が支払われています。

 翻って、これが
無料化ないし半額で済ませられるのは、個人経営か、個人経営に毛が生えた程度の小規模会社であることがほとんどです。宣伝費や人件費をかけず、安さを武器にネット上でゲリラ戦を戦えば、個人や小規模グループであれば十分食っていけるからです。

 一方で、これらの仲介手数料無料(ないし半額)会社は、
金融機関とのコネクションが薄く、難しい案件の融資付けには弱かったりします。また、不動産売買で何か問題が起きた時の対応も心もとないものがあります。大手会社であれば弁護士、税理士、司法書士との付き合いが日常的にあるのでしょうが、この点のクオリティも一定ではないからです。

 かくも不思議な仲介手数料ですが、
それが不動産業界を回す原動力の一つとなっているのが現実です。理美容業界におけるQBハウスのような革命児が現れない限り、今後も引き続き、「個人にとってもったいないお金」を払わされ続けることになるのでしょう。
 
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| ノウハウ・経験談 | 20:38 | comments(4) | trackbacks(0) |