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2017.05.22 Monday
ゲーテッドマンション−その原点との出会い
★ 「ゲーテッドコミュニティ」−これは、ゲート(門)を設け周囲を塀で囲むなどして、住民以外の敷地内への出入りを制限することで通過交通の流入を防ぎ、また防犯性を向上させた住宅地を指します。1980年ごろに欧米で登場し、現在では約5万箇所あるとされています。
当該コミュニティを周辺の脅威から守るために、外構に塀を築き、出入口には警備員を配置して、不審者を中に入れないようにすることにより、セキュリティが高度に守られることから、都市生活における理想の住まいとして、日本においても最近、「ゲーテッドマンション」と銘打って高級マンションに取り入れられはじめ、その先進性から大きなセールスポイントになっています。
しかし、私は四半世紀前に、この仕組みが取り入れられている街を訪れたことがあります。それは、アフリカのC国です。私は、中東の支社にいた時に、現地に赴任していた先輩のAさんを頼って新婚早々の妻と旅行で訪れたのでした。
C国に着いた日の晩、私と妻はAさんと街の中心地に夕食を食べに行きました。そこには現地のお金持ちの広いお屋敷がそこかしこにあったのですが、それらはすべて高い塀を張り巡らしており、出入口には自動小銃をぶら下げたガードマンが目をぎらぎらさせながら周囲をにらみつけていました。
「こうでもせんと彼らは命や財産を守れんからね」
Aさんは事もなげに言って、驚く私たちをレストランに招き入れたのでした。
それ以来、私は「ゲーテッドコミュニティ」という言葉を聞くたびに、このC国の夜の光景を思い出します。いくら洗練されたシステムを外見上まとっていても、要は、そういうことなのです。
C国の旅で思い出すことがもう一つあります。Aさんはその時、現地の日本人コミュニティの中心的な存在になっていて、いろんな日本人がAさんの家にたむろしていました。その中の一人に、数年ぶりにC国の山から下りてきたという研究者Bさんがいました。一心不乱に飯を食べていたBさんですが、やや落ち着くと、取り組んでいる研究内容を私たちに話してくれました。
「山に住んでいる野生のゴリラと人間が自然にコミュニケーションがとれるかが僕の研究テーマでね」
そのためにBさんは、年に数回しか実現しない野生ゴリラとの遭遇を求めて、毎日山を歩き回っているのだそうです。そして、ゴリラと出くわすと、Bさんはゴリラに向かって手をあげて、ゴリラの声を真似た合図の声を出し、ゴリラがそれに応じてくれるのか、試すのだと言います。そして、その時までにはっきりわかる形で応えてくれたゴリラは皆無だった、ということでした。
私たちにはその研究がどのような意味を持ち、社会の発展にどのように貢献するのか、さっぱり理解できませんでしたが、Bさんは、ゴリラとの自然なコミュニケーションがとれることを、生涯のライフワークと決めていました。最近思うのは、Bさんが求めたのは、ゴリラとの出会いそのものというより、人と人との原初のコミュニケーションはどのようなものだったのかという答ではなかったか、ということです。
25年前のC国で見聞きしたものは、強い人間不信とエゴが作った街並みと、だからこそ生まれた人間同士のコミュニケーションへの渇望でした。現代の日本のマンションの有り様も、このC国の光景と無関係ではないような気がします。
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