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不動産を捨てることができない国−マンション所有者は皆負け組へ?

JUGEMテーマ:マンション


★ 今、「銀座」駅徒歩5分の約20坪の土地が6億7,400万円で売りに出されています。坪単価は3,279万円、1平米が約1,000万円です。1メートル四方の土地が1千万円もするわけですから、目がくらみます。しかし、それでも買いたい人がいるから、この値段が付いていると言えます。

 しかし、群馬県の県庁所在地である
前橋市で現在売り出されている365平米の住宅用地の価格は40万円です。坪単価は3,700円、1平米が1,000円です。同じ関東エリアの都市部をみても、値段は1万倍違います。

 「値段がつくならまだいいじゃないか」

 私が中東に赴任している時に知り合って、今群馬で農業をしているAさんは言います。Aさんは自分の土地を、都会から農業をしに移住してきた人に貸していますが、その広大な土地の賃料は年間(1ヶ月ではありません)1万円です。耕作してくれるだけでもありがたいわけで、他人に貸す以上無料というわけにもいかず、名目として1万円をとっています。こんな土地では不動産相場というものが成立しません

 「実はもう要らないんだけど」

 ふるさとを離れ、都会で暮らす人達にとって、親が地元に残した不動産は頭痛の種です。何にも使えないのに、固定資産税を払って、維持管理もしなくてはなりません。「もう捨てたい」と思っている人が多いのではないでしょうか。

 しかし、
日本の不動産、特に土地は捨てることができません。つまり、「不動産の所有権の放棄」という登記制度がないのです。「所有権登記」やその「移転登記」はできるのですが、「所有権放棄の登記」ができる仕組みはありません。

 これが
ドイツだと、「所有権の放棄」の登記が可能で、この場合の所有権は国庫に帰属します。しかし、日本の場合は、誰かに所有権を移さない限り、自分が持つしかありません。まさに「ババ抜き」のような制度なのです。

 本日の朝日新聞の記事によれば、法務省が調査したところ、全国約10万筆の土地で、
最後の登記から50年以上経過し、所有者が不明になっている可能性がある土地の割合は22.4%にのぼったということです。登記制度の根幹を揺るがす事態なのですが、裏返して言えば、相続は不動産を捨てるチャンスなのです。登記は強制ではありませんから、ここで登記をしないことによって、「不動産という悪霊」から逃げて、行方をくらますことができます。

 つまり、
日本の登記制度は、構造的に「所有者不明土地」を作り出すシステムだということができます。不動産が「土地神話」に支えられている頃はそのような事態に陥らなかったのですが、神話の幻想は破れ、その神話が再び修復されることはまずありません

 しかし、相続が不動産を捨てるチャンスだとしても、それは子孫に類が及ばないというだけであって、現に所有しているオーナーが救われるわけではありません。そして、そのような「救われないオーナー」という病理は、少子高齢化の進行とともに、徐々に首都圏中心部に向けて進行してきています。

 マンションという堅牢な建物は、それが個人の力では除却し難いという意味では、「捨てられない土地」と同じ運命をたどろうとしています。「マンション所有」が「勝ち組」から「負け組」へと変化する日が、もうそこまで来ているような気がします。

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| ノウハウ・経験談 | 22:24 | comments(4) | trackbacks(0) |