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日本のマンションには未来がない−海外を選択せざるを得ないデベロッパー勢

JUGEMテーマ:マンション


 「もしもし」

 昨年末のこと、懐かしい電話番号から電話がかかってきました。最近はとんとご無沙汰をしていましたが、以前物件を購入した時にお世話になった一流デベお勤めのAさんからでした。

Aさん「ご無沙汰しています。今度、部署を異動になりまして、そのご挨拶です。」

私「あ、そうですか。それはご丁寧にありがとうございます。今までは営業でしたよね。今度はどの部署ですか?」

Aさん「実は海外事業部に異動になりまして」

私「!海外ですか!すごいですね!おめでとうございます!希望されてたんですか?」

Aさん「いえ、希望ではないのですが…弊社としても今後は海外に力を入れていくらしく、かなり人が国内営業から引っこ抜かれているんです」

私「…そうですか。日本も少子高齢化社会ですから、成長の余地も少ないですものね。いずれにしても花形の部署でしょうから、がんばってください」

Aさん「ありがとうございます」

 当時いろいろと相談に乗っていただき、丁寧な対応が好印象だったAさんが、一層活躍できる部署に異動になって、私も嬉しく感じました。ただ、各デベロッパーには、今後海外に注力せざるを得ない事情があるのも確かです。

 先週、国立社会保障・人口問題研究所が2045年までの自治体別の将来推計人口を発表しました。
2045年の日本の人口は1億642万人で1億人を切る手前までに減り、対2015年の人口減少率は▲16.3%になります。東京都も2025年をピークに人口が減少に転じ、47都道府県全てで人口が減少することになります。

 首都圏の新築マンション発売戸数は、2000年に95,635戸でピークを迎えました。これが昨年1年間では35,898戸に落ち込んでおり、ピーク時の3分の1強にまでなっています。資本主義社会では、会社は否が応でも毎年成長を目指さなければたちまち投資家にそっぽを向かれ、株価が下落し、会社経営は立ちいかなくなってしまいます。

 あまり正確な言い方ではないかもしれませんが、各デベロッパーは
発売戸数大幅減少という大きなハンデを、マンション価格の上昇等によりある程度補ってきました。しかし、あまりに高騰したマンション価格に対し、購入対象者の給与の伸びが追いついていないこと、また、そもそもマンションの主要な買い手である生産年齢人口が総人口よりさらに大きく減少していることから、各社はついに「国内マンション市場を見限る」傾向を強めています。

 言うならば、
今の都心超高級マンションの供給は、国内マンション市場における「最後の徒花」なのかもしれません。いくら好調な都心マンション市場に「点」として攻めても、その会社全体を牽引するだけのロットは持ちあわせていません。その意味で、分譲マンション事業は、「これからの構造不況産業」とも言えるのだと思います。

 私は以前は、日本の大手デベロッパーは、その素晴らしい技術とノウハウを海外に移出してくべきだと思っていました。しかし、最近は、
日本のマンション事業とは日本固有の住宅観やマンション観に基づいて行われているもので、世界的に見ればオーバースペックな部分が多いなど、これがすぐさま海外事業に展開できる内容ではないと感じています。

 だからこそ、日本の大手デベロッパーは、
国内事業にとどまり続けたのでしょう。「海外への飛躍を」とは誰でも言える言葉ですが、現実にはそう簡単ではないのです。

 しかし、彼らも
遂に海外に出ざるを得なくなりました。それは積極的な事業展開というよりむしろ、「将来のない国内事業に固執して座して死を待つか、それともいっそのこと」という、かなり追い詰められた選択肢ではなかったかと思います。

 そう考えると、Aさんの海外事業での活躍をお祈りしながらも、首都圏のマンションに住む私としては、
この栄転の意味するところは、日本のマンションを切り捨てることにつながるのではないか、と漠然とした不安を感じたのでした。

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| ノウハウ・経験談 | 20:54 | comments(0) | trackbacks(0) |