2021.01.27 Wednesday
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2019.04.03 Wednesday
都心という田舎−タワーマンションに住む村人たち
★ 最近、用があって、南加瀬までバスで行ってきました。南加瀬、と言っても川崎市民でないとわからないかもしれませんが、最寄り駅で言うと、JR南武線「平間」駅から徒歩20分超、「武蔵小杉」駅からはバス便で20分ほどになります。しかし、「川崎」駅と「溝の口」駅を結ぶ主要地方道沿いで、ロードサイド店が多く立ち並び、結構栄えています。
私もこの地に住み始めたのは「元住吉」駅〜「日吉」駅間の社宅が最初で、その当時は30歳代、娘たちも幼稚園児で、トヨタのカリブに乗って、あちこちに出かけていました。南加瀬近辺は、「川崎」駅方面へと抜けるのにいつも通った定番のコースであり、ロードサイドの「バーミヤン」「マクドナルド」「夢庵」など、よくお世話になったものでした。
住んでいた社宅の周りにはこれといったものがなかったので、休日は車で遠出をするか、港北ニュータウンに行くか、ラゾーナ川崎に行くか、とにかくよく出かけたものでした。通勤の帰り道でも自由が丘、中目黒、渋谷、目黒などをはじめ、いろいろ寄り道をしていました。
しかし、「武蔵小杉」駅前に住むようになり、近隣に大型商業施設ができると、港北ニュータウンにも、ラゾーナ川崎にも、さいか屋にも、溝の口のマルイにも行かなくなりました。あまりに行かなくなりすぎて、ついに車を売り、南加瀬やその近くの夢見ケ崎動物公園、幸図書館日吉分館などには「永遠の別れ」を告げることになりました。商業施設に囲まれた駅近に住んだ当然の結末でした。
それでも私が住んでいるのは川崎市なので、職場のある都心には毎日通います。したがって、その通り道となる自由が丘、中目黒、代官山、渋谷などの街にはまだ縁があります。
一方、都心に住まわれている方は、普段どのような行動をとられているのでしょう。スーパーなどはやや不便になるかもしれませんが、都心のお洒落なスポットやショッピングには事欠きません。鉄道路線が密集するエリアですから、交通の便も至便なところが多く、駐車場代の高さもあって、車などは「無用の長物」です。
私が最近聞いたところによると、最近引き渡された約100戸規模の都心新築マンションには12台の駐車場があったのですが、なんと4台しか借り手がおらず、あわてて再募集をかけたそうです。このマンションの住人の自家用車の所持率は約4%にしかならないことになります。
車のない彼らの日常の行動範囲は自然とごく狭くなります。マンションと職場が2キロメートルしか離れていないとすれば、普段の生活は直径2キロメートルの円内に収まることでしょう。お子さんなどは、大きくなるまで港区を出たことがない、といったことになるかもしれません。もちろん、目黒川の桜を見に、「郊外」の「中目黒」駅まで「遠出」をすることはあるでしょう。
ここまで考えると、これはまるで、江戸時代の市井の人々の感覚とそっくりなのではないかと感じました。当時徒歩しか交通手段のない江戸っ子は、目黒不動など目黒詣でで大いに楽しんだのです。行人坂から目黒不動尊門前までの道筋には、料理屋や土産物屋がぎっしりと立ち並んでいたと言います。今はそれが、目黒川の両岸に移っただけなのではないでしょうか。
私がよく思い出すのは中部イタリアの小さな田舎の村の暮らしぶりを紹介したTV番組で、ここに住んでいるおばあちゃん達は、生まれてこの方その村を出たことがないということでした。このグローバルな時代に、と驚いたのですが、確かに身の回りですべてが事足りる生活を送ってきた村人たちは、その村から出る必然性がないのでした。
今、都心のタワーマンションは、そのような「村人たち」を大勢作り出し始めているのかもしれません。
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