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さらば痛勤?−VRオフィスの未来とマンション市場への影響

JUGEMテーマ:マンション


★ 武蔵小杉に住んで10年超、マスコミ報道で有名な「武蔵小杉は改札外にも人があふれる通勤地獄」は東急東横線にはあてはまらないのですが、東横線沿線の人口増加から、最近は通勤電車で体が「痛い」と感じるようになりました。人口流入の動きは止まっていませんので、この「痛さ」はどこまで強くなっていくのか、怖いような気がしています。

 そんな中、5月8日の日本経済新聞の記事の
「さらば痛勤 VRオフィス」という見出しに「おっ」と目を引かれました。ここでは、VR(バーチャル・リアリティ=仮想現実)空間にオフィスを構えて急成長する米国の不動産会社『eXp Realty』が紹介されています。社員はアバターとなってVRオフィスに出社し、会議や研修など仕事をこなしています。

 2013年に株式を公開し、
6年間で株価は10倍、斬新なビジネスモデルが話題を呼び、3年前は1,000人足らずだった不動産販売員の数は現在では1万8,000人、2018年12月期の売上高は前の期比3.2倍の5億ドルと、米不動産業界で最も成長の速い会社となっています。

 アバターを実体験してみた記者とアバターで会話した技術責任者ホーランド氏は、
「オフィスの賃料などのコストがかかりません。全米の販売員とのネットワークも容易にできる」と説明しています。約400人の社員は全員が自宅から仕事し、全米に広がる契約制の販売員も支店にデスクを構えることはありません

 経営陣も全米各地に散らばり、最高財務責任者(CFO)はソルトレークシティー、上述のホーランド氏はカリフォルニア州ラ・ホヤに住んでいます。オフィス賃料だけでなく、
交通費もかかりません。浮いた費用は現地販売員の研修等に使用されています。

「物件案内で外回りをしている社員が多かったので、
オフィスに来るのは1日せいぜい6人。がらんとしたオフィスを見てこんなビジネスモデルは機能しないと思った」と言うのは他の不動産販売会社からeXp社の販売員に転職したニューヨーク在住のマッケナン氏です。今では不動産販売契約書などの書類のやり取りもすべてネットでペーパーレスです。毎週金曜日朝の定例会議には全米に広がる販売員500〜700人のアバターがVRの会議場に集まります。今やVRはなくてはならない「職場」となっています。

 ニューヨークでは、この1年間に大手不動産会社が2社廃業に追い込まれました。オフィス賃料の高騰で事業の採算が合わなくなったためです。かたやeXp社では高収益を挙げる一方、
VR空間を「ザ・ワールド」と呼び、アバターがみんなでビーチに行ったり、サッカー場でボールを蹴ったり、ジムに行ってエクセサイズやダンスを楽しみ、独立記念日には打ち上げ花火、クリスマスには雪が降るなどして、幅広い世代が参画する世界が作られようとしています。
 
 以上の記事を読みながら私が思い出したのは、2006年に一大ブームとなった
リンデンラボ社の仮想空間「セカンドライフ」でした。「セカンドライフ」は今やすっかり下火となってしまいましたが、それが目指した方向性は間違っておらず、ようやく実社会の環境がVR空間という「現実」に追い付いてきたのだと思います。

 もしこのようなビジネス社会が日本に根付けば、
日本でこそ不動産市場の様相が一変することが容易に想像できます。我が国において、首都圏、なかんずく都心の不動産価格が異様な高さになるのは、「働き場所」という物理的なロケーションが価格形成に最も大きな影響を及ぼしているからです。そのキーとなるのがあまりに便利になりすぎた首都圏の電車網で、「駅距離」が不動産価格のほぼ全てとなるような、世界的に見ても特異な不動産文化を作り上げています。

 本記事のように、もしVRがオフィスの常識となり、
「出社しなくていい会社」が上場企業の大半を占めるようになれば、会社の場所も、それに紐づいていた社員の住居の会社からの距離も、紐づけのリアルな表現形態であった「どんなに痛くても乗り込む通勤電車」も、人生において「どうでもよい些末な事項」となります。ここにおいて、マンション価格をはじめとした不動産価格の「コペルニクス的転回」が起こり、それぞれの人がそれぞれに住む場所をアトランダムに選ぶようになり、理屈の上では不動産価格は日本全国均一なものに近くなるのではないでしょうか。

 いずれにせよ、
価格の変化は、上昇にせよ下落にせよ、不動産市場に「動き」をもたらします。膠着状態に陥っている日本の不動産市場にとっても、VR社会の到来は、実は「チャンス」となるように思えます。

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| ノウハウ・経験談 | 19:24 | comments(0) | trackbacks(0) |