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脱・タワマン暴落論−マンションコラムにもEBPMを!

JUGEMテーマ:マンション


★ 本日、個人的に深くうなずける記事が掲載されました。その記事とは、著名な住宅ジャーナリスト櫻井幸雄氏の『「将来は廃墟に」タワマン・クライシスは本当か。修繕費が足りない報道の内実』です。以下、その概要をご紹介します。

「大規模修繕で積立金が不足し、膨大な追加費用が集められて大変、将来は廃墟になる……
タワマンにネガティブな報道が頻発しています。タワマンに将来はない、と金持ちはサッサと逃げ出し、ババをつかまされるのはがんばってタワマンを購入して住み続けている普通の人たち、とまで言われると、タワマンに住んでいる人たちは心中穏やかではいられません。

 果たして、
本当に「タワマン・クライシス」は起きるのか。冷静に考察しましょう。

 もちろん、タワマンは巨大な建物のため大規模修繕の費用は高額で、億単位の金額となります。しかし、費用が高くなる一方でタワマンは住戸数が多く、大規模修繕費用を分担する人数も多いので、
各住戸の負担は一般のマンションと大差がありません

 次に、
タワマンの大規模修繕は一般のマンションと比べて費用が割高になるのでしょうか。一般のマンションの場合、大規模修繕は建物周囲に足場を組むのに対し、タワマンは足場を組むことができず、ゴンドラを屋上から下ろして作業を行うので、このゴンドラ設置費用が高い、と説明されることがあります。

 しかし、実際には、一般のマンション大規模修繕において足場を組む費用の高さが問題になり、
屋上からゴンドラを下ろすほうが安いのでそちらのほうがよいのではないか、と検討されることが多いのです。

 ただし、タワマンの形状が複雑だと、ゴンドラに特殊な加工が必要になり、費用が高くなることもありますが、大部分のタワマンは、
上から下までシンプルな形状で、加工なしでゴンドラを下ろしやすいのが特徴です。

 例外的に複雑な形をしているタワマンの例として、埼玉県川口市で大京が分譲した
「エルザタワー55」があります。55階建てで、上部と中間部、下部で形状が異なり、これ以上複雑な形のタワマンは他にないだろう、と思われる個性的形状です。

 その「エルザタワー55」では、
2015年から2年がかりでゴンドラを利用した大規模修繕が行われました。ゴンドラ作業の場合、天候によって作業ができないことなどがあり、修繕の期間が長引きました。しかし、費用は修繕積立金だけでまかなわれ、追加金は発生しませんでした

 エルザタワー55を分譲した大京系列の管理会社・大京アステージでは、
これまでタワマンの大規模修繕を20件近く手助けした実績がありますが、追加金が発生したケースは1件もありません。3割ほどのケースで費用の借り入れが行われていましたが、これは修繕積立金をすべて使い切ってしまうと、修繕後に建物に支障が起きたときに対応できなくなるため、備えを残して、その分を借り入れたわけです。

 追加金の徴収なし、は、これまで22棟のタワマンの大規模修繕を助けた住友不動産建物サービスでも同様です。今回の取材で、「タワマンで大規模修繕の費用が足りず、追加金が集められた」という事実をつかむことはできませんでした。

 ただし、工事費用の見積もりをとったら、あまりの高さに驚いた、というケースは多くありました。タワマンは、大手建設会社によって建設されるため、その大手建設会社に修繕工事の見積もりをとれば、どうしても金額は高くなります。

 そこで、マンション管理組合は大手建設会社への依頼をあきらめ、
修繕の専門会社に工事を依頼し、その際にはしっかりした管理会社やコンサルタント会社の助けを借ります。そのようなやり方で、タワマンの大規模修繕は予算内で実行できています。それが、タワマンにおける大規模修繕の内実なのです。」

 久しぶりにスカッとした記事でした。最近は、「タワマン大暴落」とか「タワマンから皆が逃げ出している」とか、不安感を煽るような記事が頻発しています。これが、誰もが持つ東京オリンピック後の不動産価格への不安心理とぴったりマッチして、世間に広く流布しているわけです。

 その一つの論拠が
「最近建てられはじめたタワマンの大規模修繕は誰も経験していないから」ということでした。しかし、私はこのような記事を読むたびに、「じゃあエルザタワー55はどうなんよ」と心の中でつぶやいてきました。櫻井さんは、そんな私のもやもやした気持ちを、まさにエルザタワー55の例を中心に据えて解消してくれました。

 今回の櫻井さんの記事の
素晴らしいところは、イメージで書かれている煽り記事に対し、きちんと事実を調査して冷静に反証している点です。また、100%否定するだけでなく、見積もりは実際高額になることが多く、それを抑える工夫がいることも教えてくれています。これも、数多くの事例を調査しないと出てこない見解です。

 正直、このような記事は、
雑誌ウケはしません雑誌が部数を伸ばすためには、読者を心配させるような見出しが立つほうがいいのです。その結果、イメージだけで同じことを何度も煽り続ける記事のほうが、じっくり時間をかけて調査をした冷静な記事よりも雑誌社にとってありがたいと言えます。コスパの観点から言えば、櫻井さんが力を込めて書いたこの記事は、イメージ記事に比べて劣ってしまうわけです。

 多くのマンションコラムを手掛けてきた櫻井さんですから、
それをわかっていながらあえて、時間をかけてこの記事を書いたのでしょう。その心意気に私は感銘を受けました。

 今、政策分野では
EBPMの必要性が叫ばれています。EBPMは、Evidence Based Policy Makingの略で、証拠に基づいた政策形成、の意味です。マンションコラムにも是非、EBMC(Evidence Based Mansion Column)の流れが来てほしいものです。

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| ノウハウ・経験談 | 23:08 | comments(2) | trackbacks(0) |