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マンションから町工場を守る条例って?−将来につながる住工共生のまちづくり
JUGEMテーマ:マンション

★ 今月27日付産経新聞によれば、ものづくりの町として知られる大阪府東大阪市で、町工場が立ち並ぶ地域の住宅建設に“待った”をかける異例の条例が10月に本格施行されます。撤退した工場跡地にマンションなどが建った結果、住民の苦情で既存工場の操業が妨げられるトラブルを未然に防ぐ狙いです。他の企業城下町でも同様のトラブルは増えており、ものづくり振興と住環境の両立を図る取り組みとして注目されます。

 地下鉄とJRの最寄り駅から徒歩10分。印刷所や鉄工所など、
昔ながらの町工場がならぶ東大阪市高井田中の一角に、数十軒の真新しい西洋風の戸建て住宅が立ち並びます。いずれも数年前、工場が撤退した跡地に建てられたものです。

 ある住民から
「一日中、嫌なにおいがする。近くの塗料工場から出ているのではないか」同市に苦情が寄せられました。調査の結果、原因は塗料工場ではなく、さまざまな工場の稼働に伴うものづくり地域特有のにおいだと判明しました。こうした転入住民からの苦情により、既存工場が操業しにくくなり、廃業や転出するケースが増えているということです。

 東大阪市が10月1日から本格施行する
「住工共生のまちづくり条例」は、騒音や振動、においなどをめぐり、新たな住民と既存工場の間に軋轢(あつれき)が生じるのを防ぎ、町工場の移転を防止するのが目的です。

 同条例では都市計画法上の工業地域で住宅を新築する場合、
建築主は事前に建築計画について市と協議する義務を負うほか、騒音や振動を軽減するために二重窓などの対策を講じる努力義務規定も盛り込みました。

 国の工業統計によると、
東大阪市内の事業所数はピークだった昭和58年の約1万から平成20年には6,016まで減少しました。同市の工業地域が市街化区域に占める面積割合は7.3%で、市は今後、条例の対象地域を一部の準工業地域へも拡大する方針だということです。

 同様の悩みは、大企業が立地する他の
“企業城下町”も抱えています。パナソニックの電池工場を擁する大阪府守口市の、西端勝樹市長は「孫請けの事業所が廃業し、住宅になっていく」と表情を曇らせます。

 工業地域は地価が安く、近年は住宅の開発も増えています。東大阪市の担当者は、消費者に対し「現地モデルルームを見学するのは工場が休みの土日が多く、通行車両も少ない」と住宅取得の際の注意を促しました。

 以上が産経新聞の記事の概要です。各自治体では、
地域の良好な住環境を守るため、マンション建築に関するさまざまな規制条例を設けることがありますが、東大阪市の取組は、「町工場を守るため」というちょっと変わった内容です。

 しかし、考えてみれば
もっともな政策です。私が今住んでいる武蔵小杉エリアも、もともとは工場地帯で、そもそも東急の「武蔵小杉」駅自体が開業時は「工業都市」駅という名称だったのです。武蔵小杉では、経営不振に陥った不二サッシの工場跡地の売却をきっかけに、川崎市の政策もあって、工場用地が次々とタワーマンションへと変わっていき、それに押されるかのように、老舗企業の東京機械が駅前の広大な土地を手放し、今駅前で工場が残っているのはNEC等のIT企業のみになりました。

 武蔵小杉の場合は、地価が上昇したこともあって、むしろ経営効率を考えて移転するほうが得策という判断がはたらきやすかったのですが、東大阪市のように特に小さな工場ががんばっているエリアは、移転経費やその他の事情も含めてなかなか簡単に動けるものではありません。そもそもその地の先住者は工場なのであって、そこに後からわざわざ入ってきた新住民匂いや騒音でクレームを付けるというのは、どう考えても割に合わないところでしょう。

 しかし、工業地域はその性格から地価が安く、工場跡地など広い敷地が取れるので、価格の安い大規模マンションを造るには格好の場所となります。購入検討者がファミリーの喜ぶ豪華な共用施設に目を奪われ、また、安さに惹かれて周辺環境のことをあまりよく考えずに購入してしまうことは「よくあること」ですし、それがデベロッパーの販売戦略でもあります。

 しかも、上記記事にあるとおり、
モデルルームの見学は休日が多いため、工場稼動時の状態を知らずに決断する方も多いと思われます。住んでみて初めて、「何だこれは」となった時、購入者も困りますし、工場側もいい迷惑です。

 東大阪市の「住工共生のまちづくり条例」では、こういった状況を踏まえ、
「市民の良好な住環境とモノづくり企業の操業環境を保全し、創出することにより、住工共生のまちを実現していく必要がある」と規定しています。

 その内容をみてみると、
工業地域及び準工業地域のうち指定するエリアをモノづくり推進地域として指定し、その地域内で建築主が住宅を建築しようとするときは、あらかじめ市と協議しなければなりません。建築主は、その協議に係る住宅については、騒音等の影響を自ら低減するための措置を講じなければならないとされています。

 また、建築主は、上記の協議を行った際には、
モノづくり企業や協議会に対してその建築計画の内容を説明し、その結果を市長に報告しなければなりません。

 さらに、宅地建物取引業者、すなわち、
住宅の売買又は賃借の仲介をする者は、購入検討者又は賃借検討者に対して、そこがどういう地域であり、各種規制やモノづくり企業の立地状況がどうであるか、また、土壌汚染等の事実がないかなどについて、説明しなければなりません

 この内容をみればわかるように、当該マンションの
事情をもっとも詳しく知る者は購入検討者でも町工場のおやじさんでもなく、当のマンションの建築主であり、それを販売する仲介業者ですので、条例では彼らに対して影響軽減措置を課した上で、関係者に対する協議義務、説明義務を課すことで、当該マンションの建築計画の内容が、市にも、購入検討者にも、町工場の経営者にも伝わり皆が納得ずくで影響軽減に努めたマンションが分譲されるように工夫されています。

 それぞれのエリアにあったコミュニティがあるとすれば、工場地域では、マンション住民と工場関係者が共生する必要があることは、考えてみれば当然のことです。しかし、今まではそのような取組がなされず、お互いが不満を持つ中で、最大の起因者であるデベロッパーだけが売り抜けて知らん顔ができるという不都合が生じていました。

 こういった中で、東大阪市の取組は、
皆が合意の下でマンション分譲が行われ、ひいてはそれが住工共生のまちづくりのきっかけになるのではないか、という期待まで感じさせるものとなっています。昔も今も、そしてこれからも日本の現場を支え続ける町工場が元気であり続けるために、一つの可能性を示唆する明るいニュースだと感じました。

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