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今年もカルガモは来なかった−誰もが影響を受けるマンション販売イメージ戦略
JUGEMテーマ:マンション

 「もう出逢えないだろう丘の作品に、すべての情熱を」これは、最近見たマンションの公式HPのコンセプト紹介の一文です。10年ほど前、マンション宣伝広告で「もう出逢えないかもしれない」というコピーが流行しましたが、一時代回ってまた同じようなコピーが登場してきました。

 繰り返しこの言葉が使われるのは、
やはりそのコピーが販売戦略上効果があるからでしょう。実際、「もう出逢えないかもしれない」というつぶやきのような言葉は、全く嘘を言っておらず一つの物件は言うまでもなく唯一無二ですから、同一の物件に再び「出逢う」はずがありません。

 このコピーの優れているところは、その紛れもない客観的事実「かもしれない」という主観的な言葉を付加することによって、この言葉を読者の「内面の言葉」に変えてしまい、かつ、その前の言葉として「今買わなければ」というフレーズを読者自らが自然と付け加えてしまうため、読者が心の底から、「購入しなければ」という焦燥感を感じる点にあります。

 実際には、
もう少し待てば、類似の物件や、さらに良い物件が出てくるものなのですが、「ここで呼び止めなければあの人とは永遠に会えなくなってしまう」的な切なさが澎湃として沸き起こり、冷静な判断ができなくなってしまうのです。

 冒頭の
「もう出逢えないだろう丘の作品に、すべての情熱を」は、その応用編といえます。「もう出逢えないだろう」という「主観的」な希少価値に、それにふさわしい「作品」(=傑作)とするため、売主としても他にはない、あらん限りの情熱をもってマンションを作るのだ、と読者は感じます。つまり、従来の焦燥感を感じさせる希少性に、売主の特別の情熱を加味し、ますますプレミアムなマンションとなるのだ、と思わせるのです。

 ただし、その下の説明文を読んでも
この「丘」がなぜ希少なのか、具体的な説明はありませんでした。「特別の情熱」については、意匠にかなり工夫を凝らしている点は納得できましたが、全体としてみれば、やや腑に落ちないプレゼンになっています。

 しかし、
読者の頭には、既に「希少な丘の特別のマンション」というイメージが刷り込まれていますので、購入検討者はそのような好意的な眼で持って本物件を見るでしょうし、その物件の「希少性」「特別性」を自らに言い聞かせるように検討するに違いないのです。価格についても、「何だかよくわからんが特別なマンションだから高いんだろう」と思いこもうとするでしょう。購入検討者がこのフレーズを見た瞬間、イメージ戦略は完遂していると言えます。

 私も、
今のマンションを購入する際に最も惹きつけられたのは、マンション内の池でカルガモのような水鳥が静かに泳いでいる1枚の絵でした。その絵の説明には、どこにも「マンション内に設えられたこの池ではカルガモが静かに泳ぐ光景を目にすることができます」書いているわけではありません

 しかし、
私の頭の中には、「駅前でありながら、森のような自然豊かな環境が創出され、水辺ではカルガモをはじめ鳥達が羽を休める癒しの風景を楽しむことができるのだ」という憧憬のイメージがすっかりできあがってしまいました。私がこのマンションを購入した理由はいろいろ説明できますが、その説明できない主観的な部分で、この「カルガモ」が決め手になったのは、(白状すれば)間違いありません。

 そして、本マンションを購入し、
住み始めて5年が経過しましたが、マンション内の池にカルガモが降り立って、この絵のように静かに泳いでいる姿をただの一度も見たことがありません。考えてみればすぐわかることですが、カルガモはマンション住民にとって「一幅の絵画」になるために飛来するわけではなく、そこにエサがあるから飛んでくるわけです。

 つまり、
池には鳥達のエサとなる昆虫類や小魚が住んでいなければならず、昆虫や小魚がそこに生きるためには、そのエサとなるプランクトンなどが住んでいなければならず、すなわちその池の水は植物や藻類などが生い茂って微小生物が住めるようなどろどろの水(不正確な表現ですみません)でなければならないのです。大切なマンション内の共用施設としての池がそのような見た目の良くない状態で放置されることをマンション住民が許すはずがなく、そのために池の水は循環ろ過装置を付けて常にきれいな水として循環させられ、したがって、カルガモはいつまで待っても飛んでこないわけです。

 このように、
私のマンション購入の決め手となった「カルガモ」はおよそありえないイメージだったのですが、売主が別にカルガモの飛来を保証したわけではありませんし、ひょっとすると何か勘違いしたカルガモが飛んでこないとも限りません。この絵をもって、「私はカルガモが来ると思ってこのマンションを買ったのだあ!」と売主にクレームをつけるのもあまりに恥ずかしい話です。

 ということで、この
イメージに魅了された購入者は私だけではないと思いますが、この絵に後からクレームがついた、という事実も聞いたことがありません売主のイメージ戦略は見事に成功したわけです。

 私達がマンションを購入するとき、その
動機を注意深く探ってみると、実はこのようなイメージの刷り込みに乗せられている部分が結構あるのではないかと思います。そのイメージはおそらく、購入後も長くそのマンションに対する好印象として抱き続けるものでしょうから、あながち否定すべきものではないのですが、購入検討者としてそのような心の動きを意識しておくことも大事かと考えます。

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| ノウハウ・経験談 | 20:34 | comments(2) | trackbacks(0) |
Comment
いつも楽しく拝読しています。オチもついていて素晴らしいと思うとともに、私も同じように、イメージ先行でマンションを購入したもので、共感しました。実際には、その物件が位置する土地の成り立ちや、物件の駅距離など、調べられるだけ調べていたのですが、結果としては、イメージの占める割合が大きかったと思います。cg技術のない時代はどんなマンションチラシやパンフレットだったのでしょうか。
| kona | 2013/12/14 12:15 AM |
konaさん、こんにちは!
コメントいつもありがとうございます!!

私もたくさんのモデルルームを回り、
駅距離や間取りや配管の位置まで
チェックしておきながら
結局はイメージで買ったんだなあ、
と、今思い返しています。

一度1990年代バブルの頃の
神戸のマンションのパンフレットを
見る機会がありました。
それは夕焼けに佇むマンションの外観で、
cgは使っていないものの
やはりきれいなイラストで惹きつけられました。
この時代はイラストレーターの
手描きだったのでしょう。
マイホームは夢で買うものですから、
イメージは大切なのでしょうね。

今後ともどうかよろしくお願い申し上げます!!
| coralisland | 2013/12/14 10:33 AM |
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