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5千万円物件が売れずに8千万円物件が売れる理由−不動産市場の不都合な真実

JUGEMテーマ:マンション


★ ニッセイ基礎研究所が9月7日に発表した『不動産クォータリー・レビュー2017年第2四半期』では、現下のマンション市況に関する指標についても随所に言及しています。以下にその概要を記します。

「全国の住宅着工戸数は、貸家が全体の着工戸数を下支えし、
年率換算で100万戸の高い水準で推移しています。首都圏分譲マンション価格は上昇が続き、契約率は好不調の目安である70%を下回ることが多くなっています。首都圏マンションの契約戸数を価格別にみると、2014年以降、5千万円未満では契約戸数が大幅に減少し、8千万円以上で増加傾向が見られます。」

「主要都市の賃貸マンション賃料指数は、東京や札幌、福岡をはじめとして、
概ね上昇基調にあります。ただし、首都圏の居住用賃貸物件の成約数は、アットホームによると16ヶ月連続で減少しており、必ずしも需要は強くありません。貸家着工の増加から、首都圏の賃貸マンションの空室率は上昇傾向にあります。」

「2017年第2四半期の
東証REIT指数(配当除き)は、3月末比▲4.6%下落し1年4カ月ぶりに1,700を下回りました。Jリート投信(上場ETFを除く)からの換金売りが続き需給環境が悪化しており、年初からの東証REIT指数の下落率は8.7%に拡大しました。REIT市場が調整色を強めるなか、エクイティ資金の調達を伴う大型取引が手控えられており第2四半期の取得額は大きく鈍化しました。
 足もとのファンダメンタルズは依然として良好です。賃貸市況の回復と金融コストの低下によって、市場全体の分配金利回りは4.0%に上昇しNAV倍率は1.1倍まで低下したため、
バリュエーションの魅力度が高まっています。」

「2017年4−6月の不動産売買高は8,227億円(前年比+29%増)となり、3四半期連続で前年同期の水準を上回りました。利回りの低下や不動産価格の上昇を背景に、
東京周辺部や地方圏における取引比率が高まっています。今年に入ってからは、横浜みなとみらい地区や天王洲、品川シーサイド、大阪などでの高額取引が目立ちます。海外投資家の売買が急増していることも、2017年に入ってからの特徴です。
 取引額の増加は、不動産投資市場がピークにあるとされる比率が2/3に達し、
売り時と判断する投資家が増えていることを背景にしています。」

 以上が同レポートにおける抜粋です。住宅着工戸数の増加は、目下の建築業の市況にはプラスなのでしょうが、
「作り過ぎではないか」と心配する声が多いのが昨今の状況です。総務省の調査によれば、昨年1年間の世帯数の増加は409,599戸に過ぎません。これに対し、住宅は年間100万戸増えているわけですから、単純に考えれば60万戸は余剰と言えます。この傾向が継続するならば、不動産市場にどのような未来が待っているかは明らかです。

 ここ2、3年で、団塊ジュニア世代が40歳代に突入しました。団塊世代の第一次ベビーブーム、その子どもたちである団塊ジュニア世代の第二次ベビーブームに続く
第三次ベビーブームの波はついに現れませんでした。今後は人口増加の見込みが全く立たなくなったという意味で、深刻な事態です。

 ただ、団塊ジュニア世代が就職した平成一桁の時代はまだ「勝ち組」と言える時代で、その次に来る平成二桁時代に就職期を迎えた世代は「就職氷河期」にぶち当たり、企業が体力温存に走って非正規雇用を大幅に増やしました。新自由主義が蔓延した社会の風潮もこれを後押しし、
現在30代となった彼らの平均年収は従来より低いレベルにとどまっています。

 上記のレポートでは、「5千万円未満では契約戸数が大幅に減少」とありますが、これは
住宅第一次取得者層のヤングファミリーのマンション購入が大幅に減っていることを意味すると思われます。それは、専業主婦と子どもがいて郊外にマンションを求める従来型の家族の購買力が大きく低下していると言えるのではないでしょうか。いや、そもそも結婚できるだけの収入力のある男性が急減しているのではないかとも思われます。

 かたやマンション契約が「8千万円以上で増加」しているのは、
夫婦共働きの2馬力の家庭が力を増していることの現れといえます。夫婦それぞれが年収700万円を得ていれば、2人で年収1,400万円となり、8千万円超のマンションを購入することは十分可能です。「女性活躍」「働き方改革」という目標からすれば好ましい傾向、と言えるのかもしれません。

 しかし、そのような
順風満帆な家庭はごく少数で、少数の「勝者」と多数の「敗者」の格差が広がっているような気がしています。少数の勝者の需要によって賃料も押し上げられているのでしょうが、全体に及ぶほどの力強さはなく、投機的な投資は行われてもその裏には逃げを打つ不動産オーナーの大量売却があって、市況の先行指標といえるREIT指数は2015年の水準をも下回っています。

 東京の人口も、今から10年にも満たない2025年にはピークを迎え、その後は減少の一途をたどり、かつ、高齢化は他の都市を上回るハイペースで進行していきます。私たちはこれらの「不都合な真実(An Inconvenient Truth)」の存在をわかっていながら、それに目をつむることに慣れきってしまったようです。
 
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| 市場動向 | 22:16 | comments(2) | trackbacks(0) |
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| - | 22:16 | - | - |
Comment
初めまして。
ゆるりと申します。

20代後半・23区外出身で現在は都内で働くサラリーマンです。

今回の記事が私の実感ともぴったり一致したのでコメントさせて頂きます。

私は中学まで地元の公立に通いましたが、そこで出会った友人はそもそも正社員が少ないため、結婚してもどちらかの実家に住むことが多く、とても数千万円を支出して新たに家を買うようには思えません。

一方、高校・大学で出会った友人の多く(特にインカレサークルで出会った東大生)はほとんどが夫婦とも正社員かつ共働きで、高いなと言いつつも7000万〜1億近い駅近物件を実需として購入しています。彼らの多くは実家にも余裕があり、1千万円前後の住宅資金贈与を受けていることも影響しているのでしょう。

パワーカップルの増加、中間層の没落、格差拡大、中心部物件の価格高騰は先進国全体で起こっているトレンドですし、世界の主要都市中心部の不動産価格に比べれば東京はまだまだ割安ですから、

よくも悪くもこれらのトレンドは続く気がします。
| ゆるり | 2017/09/11 11:19 AM |
ゆるりさん、こんにちは!
コメントどうもありがとうございます。

私の知り合いにも、
前からマンション購入を希望していながら、
住宅ローンが組めずに賃貸暮らしを続けている方がいます。
20代から検討していたのですが、
今は30代となり、
今後も見通しは厳しそうです。

都心高額物件を買える30代カップルは、
その後も順調に年収が伸びていく可能性が高く、
買い替えも容易で、
マンション売却益との相乗効果で
さらなるランクアップも望めます。
30代という10年そこそこの間に、
「買える者」と「買えない者」の格差は、
さらに広がっていきそうです。

世界の趨勢も同様というゆるりさんのコメントは
大変参考になりました。
おっしゃる通り、これが変え難いトレンドだとすれば、
不動産とは格差を作り出す最大要因なのかもしれません。

今後ともどうかよろしくお願い申し上げます!
| coralisland | 2017/09/12 7:44 AM |
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