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★ 4月27日付朝日新聞デジタルは、『ホテルやマンション併設… 異例のスタジアムパーク構想』と題して、長崎で進行中の驚くべき構想を報じています。以下その概要を記します。
『今季からサッカーJ1に参戦している長崎で、国内では異例の内容といえるサッカー専用スタジアムの建設計画が動き出しています。予定地はJR「長崎」駅近隣で、スタジアム建設費だけで百数十億円をかけ、そばにはホテルやマンションを建て、総事業費は500億円となる予定です。2023年からの使用をめどに、J1長崎の親会社のジャパネットホールディングスが全額出資する方向で進めています。
収容人数は2万3千人、ピッチは天然芝にする予定です。観客席には透明の屋根をつけ、新たに建設するホテルやマンションからも試合を眺められるようにします。建設予定地はJR「長崎」駅から北に約1キロの三菱重工業長崎造船所幸町工場の跡地です。
プロ野球やサッカーのスタジアムで、同一敷地内でホテルやマンションなど多くの建物を併設するのは、日本では例がありません。ホテル、マンションはいずれも300室の予定で、ホテルでは例えば、スタジアムで試合がある日には相手サポーターの宿泊も想定したもてなしも考えているということです。このほかにアリーナの建設も検討しています。また、敷地内には企業向けの大規模なオフィスもつくり、企業誘致も狙い、新たな雇用の創出も目指すということです。
ジャパネットHDの高田社長はこの場所に毎日7千〜8千人が行き交うことを考えています。高田社長は「長崎のなかにもっとわくわくをつくっていきたいという思いで考えた」と話しました。さらに地方創生という観点を挙げ、「おこがましいが、このプロジェクトがうまくいき、『うちも』という他の都市が増え、地方が盛り上がるのではと思い、夢も含めてチャレンジした」と語りました。』
以上が朝日新聞の記事の概要です。今日もJR「武蔵小杉」駅北口ロータリーでは、川崎フロンターレの試合を見に、大勢の人たちが等々力アリーナ行きのバスを待っていました。日本にJリーグを立ち上げる時、時の川淵チェアマンがこだわったのは、地域密着型のプロサッカーを根付かせることでした。
その願いは、紆余曲折を経ながらも、長い年月を経て定着しようとしています。Jリーグカップに優勝しながら深刻な経営難に見舞われた大分トリニータをはじめ、どのチームも常に資金不足と背中合わせになりながら、地域の人達とともに懸命に夢を追い続けてきました。
その姿は、何度も苦境にあいながら遂に全国規模となった地方の会社経営者に、自分の姿を重ね合わせるかのような共感を呼び起こさせるのでしょう。1986年、長崎県佐世保市で「有限会社たかたカメラ」から身を起こした「ジャパネットたかた」も、2017年に経営難に陥ったサッカークラブ「V・ファーレン長崎」の救済を目的に、同社をジャパネットHDの子会社にしています。
造船業がまだ盛んだった昭和50年頃は、長崎市の人口は45万人でピークを迎え、今や政令指定都市となった熊本市と競うほどの人口を有していました。長崎市の現在の人口は近年減少傾向で42万人、かたや熊本市の現在の人口は74万人に達しています。
21世紀に入ってから長崎県の人口減少は他県に比べてもスピードが早く、2000年の152万人が現在138万人となり、30年後の2045年には100万人を切ることが予想されています。江戸時代には出島を擁し、時代の先端を行っていた長崎がその地理的ハンデ等のために危機的状況に陥っています。
おそらく本件スタジアムパーク構想は、採算は度外視でしょう。その規模の大きさゆえに、ジャパネットHD本体の経営を揺るがしかねないプロジェクトかもしれません。それでも高田社長がこの構想を推し進めるのは、自分を育ててくれた故郷に、少年時代の活気を取り戻すための一助としての恩返しをしたかったからでしょう。
地域の中で最も人が集まりやすい場所に、スタジアムと、それを上から存分に眺められる夢のようなマンションとホテル、そしてアリーナまでも作る−確かにこれは、衰退を続ける地方都市を立ち直らせる乾坤一擲の大勝負です。リスクも大変大きいですが、もしこれが成功すれば、各地に展開できるビジネスモデルにもなり得ます。
マンションは、人が集ってともに生活する空間を創り出します。それは千代田区、中央区、港区の富裕層対象のタワマンという姿ではなく、人口が希薄化する今の地方にこそ切実に求められている住まい方なのかもしれません。
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