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昭和のマイホーム取得促進は狂乱物価対策だった−持ち家手当の復活が日本を救う?

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 「努力すれば、家を持てる制度」

 − こんな政策があったのをご存知でしょうか。これは、昭和50年、崩壊した田中角栄内閣の後を継いだ三木武夫内閣が掲げた新たなビジョン「生涯設計〈ライフサイクル〉計画」の具体策の一つです。残念ながら三木内閣は短命に終わったため、これらの施策は日の目を見ることはなかったのですが、私は、このいかにも昭和の時代らしいスローガンに心を惹かれました。

 このビジョンは、
昭和50年(1975年)に村上泰亮氏らが著した「生涯設計〈ライフサイクル〉計画」を下敷きにしたものです。田中角栄の列島改造論から生じた地価急騰による急激なインフレーション、続けて、第四次中東戦争(73/10)による第一次石油危機の勃発により、相次いで発生した便乗値上げ等により、さらにインフレーションが加速、1974年における国内の消費者物価指数が23%上昇、狂乱物価と呼ばれました。

 これらの情勢を受けて、三木内閣が目指したのが
「福祉国家への転換」であり、それを生涯の各段階で体系的に保障し、各人が生きがいを追求することを可能にしようとします。その中の柱の一つが、不動産価格高騰で誰もがマイホームを諦めかけていた時代に夢を持たせる「努力すれば、家を持てる制度」だったのです。

 「生涯設計〈ライフサイクル〉計画」の中で、著者の村上氏が考えていた目標が、
「都心から1時間程度の距離にある60〜65平米の3LDKマンションが1,500万円程度で、若しくは750万円〜1,000万円の土地に75〜100平米の家屋(1,500〜2,000万円程度)が購入できる」ようにすることでした。そして、それが実現するための条件を、金利や住宅価格上昇等を考慮に入れながら緻密にシミュレーションをしています。

 しかし、私が最も驚いたのが、
国民に「頑張らせて家を持ってもらう制度」の真の狙いが、「狂乱物価を抑えるため」である、ということです。つまり、家を買うには「努力して」貯蓄をしてもらう必要があります。そのための奨励策をいろいろ施すことを提案しているのですが、要は、国民が住宅取得のために一生懸命貯蓄をすれば市中に現金が出回らなくなり、金が金を呼んで価格が高騰していく悪循環が止められる、というのです。

 逆に、
皆が家を持つことを諦めてしまうと、人生最大の買い物である家を買う必要がなくなるのですから、その分日々の消費にお金が回ってしまいます。これは、強烈なインフレーションを止めることが国家の最重要課題だった当時の政府にとっては最も望ましくないシナリオだったということです。

 1990年代のバブル崩壊以来、
長らく続くデフレに悩まされている今の日本にとっては、考えられない真逆の社会情勢です。就任以来、年率2%の物価上昇率を目標に掲げる日銀の黒田総裁にとっては、当時は「夢のような」状態に見える、と言ったら言い過ぎでしょうか。

 しかし、もしかすると、
ここに今のデフレを脱却するヒントがあるかもしれません。当時と正反対の施策を取るとすれば、「皆にマイホームを諦めさせる」というのも理屈としては一つの方策です。今はいくら金融緩和を施しても、市中に金が回らない状態ですので、皆が住宅のために貯蓄しても購入は不可能だから、消費に回したほうがベターだ、と思わせる環境にする必要があります。

 もっとも、そのためには、
全ての人に生涯にわたって快適な住環境を提供するという保証をしなければならず、つまりそれだけの立派な公営住宅を国民の数だけ用意しなければならなくなります。もちろんこれは、土台不可能なことです。

 個人的に提案したいのは、
各企業が以前有していた「持ち家手当」を復活させることです。各自が家を持つのはよいのですが、そのためには巨額の住宅ローンを組み、毎月多額の支払いを老後まで続けていく必要があります。この住宅ローンの支払いにより失われる消費機会は、日本全体からすれば莫大だと思われます。

 社員の面倒を一生涯みてきた昭和の日本型家族経営の企業では、
賃貸住宅の家賃補助のみならず、持ち家についても手当を出して支援をしてきました。世界と競争するために、コストカットが吹き荒れる昨今ではすっかり過去の制度になってしまいましたが、これは、単に社員の福利厚生のためだけではなく、負担の重い持ち家世代の家計を助けることで消費を活発化し、ひいては日本経済を下支えする効果をも有するのではないか、と思うところです。
 
 なお、当時求めていた
都心1時間内の新築マイホーム(戸建てで土地・家屋合計2,250万円〜3,000万円)は、あまりに都心と郊外の住宅価格差が出てしまった昨今、実は40年後の今でも実現可能なレベルで存在しています。つい最近見つけた新築戸建物件は、京急本線「馬堀海岸」駅徒歩7分、90平米台の3LDKで1,990万円(https://suumo.jp/ikkodate/kanagawa/sc_yokosuka/nc_88702882/)、「馬堀海岸」駅から「品川」駅までは1時間内で着くことができます。

 不動産価格が毎年1割以上上昇し続けていた当時からすれば、
40年後にそれがそのまま通用できる物件があるなど、夢にも思わなかったことでしょう。経済というのは誠に読み難い、というのが実感です。

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| ノウハウ・経験談 | 22:17 | comments(0) | trackbacks(0) |
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