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中国人が好む立地とは?−王さんの思い出

JUGEMテーマ:マンション


★ もうずいぶん前のことですが、不動産仲介会社の王さんにお世話になったことがあります。気になる物件があって、電話で問い合わせたところ、案内に来たのが王さんでした。

 電話に出た人が女性だったので、てっきり女性社員が来るのだと思って待ち合わせ場所できょろきょろしていたのですが、それらしい人が見当たりません。冬の寒い日で、20分くらい吹きさらしの場所で待っていたところ、同じく隣でガタガタ震えていた青年がやおら携帯を取り出して
「〇〇サン、コナイヨ!〇〇サン、コナイヨ!」と私の名前を連呼し始めたので、ようやく彼が案内人だとわかりました。

 王さんは日本の大学に留学してそのままこの仲介会社に就職したとのことでした。当時は中国経済が絶好調で、多くの中国人が日本の不動産を求めて日本にやってきていました。不動産所有が認められていない中国と異なり、日本ではお金さえ出せば誰でもたやすく不動産のオーナーになることができます。しかも、長年のデフレの影響で、東京の不動産は、名だたる世界の主要都市の中で格段に価格が安く、資産価値の観点からも中国人に飛ぶように都心のマンションや土地が売れていったのです。

 そんな
中国人の「爆買い」を当てにして、この仲介会社は王さんを雇ったのでした。と言っても、日本人相手の時には補助に回されるらしく、王さんは私を車で待つ日本人社員のところに連れていく役割だったのです。ぬくぬくと暖房の効いた車内で待っていた日本人社員に対し、寒風に吹きさらされた王さんと私には、いつしか国境を越えた連帯が生まれていました。

 見に行った物件は、「自由が丘」駅徒歩10分圏内の中古戸建でした。格安に思えましたが、敷地と道路に大きな高低差があり、1階部分は地下に沈んでいました。それでも見学者は後を絶たなかったようで、スピード感に気圧された私は、それ以上のステップを踏むことができませんでした。

 その夜、仲介会社から来たメールの送信者は日本人社員ではなく、王さんでした。


「もっといい物件あるよ。見に来ますか」

という言葉と、でかい写真をばこばこ貼り付けた奇怪なメールに情熱を感じ、私は思わず次の週末のアポを依頼しました。

 次の土曜日、今度は王さん一人が車で迎えに来てくれました。


「正直言うと、こないだの物件、全然いいと思わないね」
「んー、確かに土地の形状に難ありだけど」
「いや、そうじゃなくて、なんで自由が丘がいいのよ。値段が高いだけで、全然面白くないじゃない」
「んん?日本人の憧れの場所だけど」
「自分は東横線とか田園都市線とか魅力を感じないね。東急線はダメ。街並みがきれいなだけ」
「そのきれいな街並みがいいんだけど」
「気取っていて、中国人には人気ないヨ」
「じゃあ、王さんはどの場所がお薦めなの?」
「日比谷線の入谷とか三ノ輪とか。池袋も。にぎやかで面白い。そこなら飛ぶように売れるヨ」
「ふうん」

 日本人には西洋への憧れがあり、きれいな邸宅地が従来から人気でした。最近は駅近が重視されるようになりましたが、繁華性はむしろマイナス要因となる場合もあります。中国人の感覚だと、むしろ下町に近い活気が好まれるかもしれません。そこにはいい意味での人間臭さがあり、「人が人として住んでいる」という実感があるのでしょう。それはそれで、何となく理解できるものがありました。

「中国人はね、気に入った物件があると、価格をつり上げる」
「日本でも売値が上がることはあるよ」
「いや、買うほうね。1億円で競争になると、1億1千万円出すとか。日本だと売るほうが困っちゃう」

 王さんがおすすめした物件は、確かにその価値はわかるのですが、やはりどことなく「これじゃない」感があって、丁重にお断りしました。

 それでも王さんは週に1,2度は、カタコトの日本語とともにコンスタントに物件資料を送ってくれました。しかし、やはり趣味は合わず、ついにある日王さんに電話しました。


「王さん、やっぱり無理だわ」
「そうか?東横線にしようか?」
「うーん…ちょっと今仕事が忙しくなって。余裕ができたら電話する」
「…そうか。約束だよ。日中友好のために」

 それから3年後、私は思いきって王さんのいた仲介会社に電話しました。

「王なら1年前に退社しましたよ」

 中国ではその後、中国人の海外不動産投資を抑制するための法律ができ、日本の不動産へのお得感が薄れたこともあって、中国人の不動産投資のための訪日はめっきり減ってしまいました。王さんもまた、新しい可能性を求めて、違うフィールドに旅立ったのでしょう。

 日本と中国の関係は、今年は習近平国家主席の訪日が予定されるなど、ようやく
雪解けモードになってきました。しかし、私と王さんの日中友好関係は未だ果たされないままでいます。 

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