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「コロナ→テレワーク→郊外」ストーリーは本当か→統計数値との正しい付き合い方

JUGEMテーマ:マンション


★ 少々古い記事ですが、8月21日付の日本経済新聞の記事によれば、不動産経済研究所が発表した7月の首都圏の新築マンションの発売戸数は前年同月比7.8%増の2,083戸でした。神奈川や埼玉といった近郊がけん引し、11カ月ぶりに前年実績を越えました。

 これは、前年が大幅減だった反動もありますが、
コロナ第二波の中で増えた格好です。コロナの影響が顕著だった4月、5月が前年を5〜8割下回っていただけに、「想定以上の数字」との声も上がっています。

 特徴的なのは、
東京23区が19.3%減なのに対し、23区を除く都内は42.2%伸びました。神奈川県は53.5%増、埼玉県も42.9%増となっています。1戸の価格が前年同月比7.9%増と高止まりする中、相対的な値ごろ感が人気を集めています。

 不動産助言会社トータルブレインが不動産各社の上記の販売状況を調べたところ、
神奈川県や埼玉県、千葉県で「好調」の割合が大幅に増えました。「都心の価格上昇についていけない顧客を中心に、郊外でも駅に近く割安感のある家族物件が人気だ」ということです。

 不動産経済研究所のデータでも、消費者の購入割合を示す
契約率が7月は神奈川県や千葉県で好不調の目安の70%を超えました。

 郊外への関心の高まりは中古でも顕著です。中古物件情報サービスのハウスマートが5〜7月に約5千人にアンケートすると、30〜40代の家族層中心に重視する点に変化が現れました。2019年に24.2%だった「駅との距離」が14.8%に減る一方、「広さ」は26%から28.9%に増えました。希望エリアは「職場の近く」が約2ポイント低下しています。

 「テレワーク普及で働き方が変わり、駅からやや遠くても広さを重視する人が増えた」と分析されています。ただし、近郊では戸建てとも比較されやすく、嗜好変化に対応する戦略が問われています。

 以上が日本経済新聞の記事の概要です。この内容は、不動産経済研究所のプレスリリース『首都圏のマンション市場動向―2020年7月度―』を基にしたものです。

 記事は、
うまく時流に載せた内容となっています。その最も大きな拠り所は、地域別発売戸数が「東京23区が19.3%減なのに対し、23区を除く都内は42.2%伸びました。神奈川県は53.5%増、埼玉県も42.9%増」となったことです。むしろこの数値に飛びついて、「コロナ→テレワーク→郊外」ストーリーを組み立てたという気がします。

 しかし、これは、
書きやすい数値をつまみ食いしたものとも言えます。ここで掲げられていない千葉県の発売戸数は、▲29.9%という大幅減となっています。

 また、
「契約率が7月は神奈川県や千葉県で好不調の目安の70%を超えました」とありますが、上記で好調の原動力とされた都下の契約率は48.1%、埼玉県の契約率は55.4%しかありません。発売戸数と契約率の両方の数値を見れば、都下と埼玉県では、「大量の在庫を抱えたデベロッパーが耐えきれずに在庫を売りに出しましたが、案の定成約できずに大量の売れ残りとなってしまい、『どうしたらいいかわからない』と頭を抱えています」という記事に仕立てることもできるのです。

 押さえておかなければならないのは、
発売戸数が僅少な最近の販売状況では、各物件の発売戸数や契約率が直ちにそのエリアの発売戸数や契約率の増減として大きく影響を与えるという事実です。

 例えば、発売戸数が「東京23区が19.3%減なのに対し、23区を除く都内は42.2%伸びました。神奈川県は53.5%増、埼玉県も42.9%増」というのは
実戸数で言えば、23区は178戸減、都内は79戸増、神奈川県は193戸増、埼玉県は113戸増ということです。いずれも、大規模マンションの第1期販売が実施されたか否かで左右される規模感です。前年比較との兼ね合いですから、各年のロット感はこの半分で十分出てくる数値でもあります。

 ただし、各記事には世論形成効果もありますので、これを読んだ方々が
「今トレンドは郊外なのか!」とまじめに思い込み、郊外型マンションが売れていくということがないとは言えません。ともあれ、読者としては、記事一片に踊らされず、その程度の読み物として楽しんで読むのが正しいスタンスだと思います。

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